素材

『東福原の家Ⅱ』 掻き落とし

米子市『東福原の家Ⅱ』では、外壁最終工程の『掻き落とし』が完了しました。

掻き落としとは、土表情の塗り壁をワイヤーブラシや剣山などで表面を“搔き落とし”してザラっとしたテクスチャーを造る左官工法。

混入する骨材の種類や大きさ、水分量、配合、顔料もさることながら、掻き落とす道具の違いによって、上品にも力強い表情にもなる面白さがあります。

昨年同じ掻き落としを施した『上道の家』では、薄鼠色の三州瓦屋根との組み合わせを勘案して若干緑色の顔料を配合し、骨材も比較的小さくして上品な和の表情としたのに対して、壁面を主体としたこちらでは濃いめの顔料かつ骨材を大きくすることで力強い土壁の表情を目指しました。

この工法の難しい点は、外気温や湿度によって水分量をコントロールして、上塗りの水引き(乾き具合)の程よいタイミングで掻き落とす、職人のカンと経験に拠るところ。

道路に面した東側の大壁面では、粘土のようなしっとりとした上塗りを左官職人が上部と下部に分かれて同じ力加減で掻き落として、徐々に荒々しい表情を出していく、やり直しがきかない“一発勝負”。

この壁を掻き落とすために鉄板を加工して専用の道具まで作って下さった、まさにプライドと執念が結実した美しい壁を造り上げてくださいました。